自転車酔い

子供の頃から乗り物酔いがひどかった。車、電車、船、どんな乗り物でも車中で具合が悪くなる。

窓の外の遠くの風景を眺めることから乗り物酔いのツボを刺激することまで、様々な対策を試しながら耐え忍んだ。

きっと体質もあるのだと思う。残念ながら、大人になったからと言って乗り物酔いが平気になることはなく、むしろ悪化したくらいだった。

疲労やストレスで調子が悪いときは、自転車でも酔う。めまぐるしい景色の移り変わりに、「自転車酔い」をする。自転車酔いという言葉があるかどうか知らないが、苦しくて乗っていられなくなる(降りると徐々に落ち着いてくる)。

もともと低血圧など体調も崩しやすく、その上で景色や視線の角度も変化するので、体が対応できないのだと思う。

高所恐怖症も、昔から変わらない性質として克服できずにいる。

ジェットコースターも乗ったことがないし、観覧車も数える程だ。そもそも閉所も苦手なので、観覧車はロマンチックな空間というよりも、天上の牢獄に近く、数回乗ったことがあるが、じっとうつむいて座り、早く終われ、早く終われ、と願っていた。

高所恐怖症も、消えるどころか大人になって悪化した。

高所恐怖症と言うと、高い場所から下を見ることで恐怖を覚え、めまいや不安感に襲われる、というのが一般的だと思う。

もちろん、高い場所から下を覗くときがもっとも恐ろしい。一方で、高所から地上を見るときだけでなく、単純に高所に立っているだけでもぐらっと来たり、また下から高い建物を見上げるときにも似たような症状が起きることがある。

たとえば、大きな橋を渡っているときも、川面を覗かずにただ渡っているだけでも、パニックになるほどではないがぐわんと足がすくむ。

もっと極端な話をすると、新しい靴を履くだけでもめまいがする。

普段の擦り切れた底の靴から、新品の靴になることで「高さ」が変わる。そのことにすぐに対応できないのだと思う。新しい靴にして、慣れるまで数日はざわざわする。

高所恐怖症には、たぶん二つの要因がある。一つは、高所から落ちた際のことを想像する恐怖感や不安感が人一倍強いこと。もう一つは、いつもと若干「足場」が違うことに対する対応力が弱っているということが挙げられる。

自転車酔いにしても、新しい靴の「高所恐怖症」にしても、普段と自分の立っている位置がわずかに変化しながら歩み出すので、世界に正しく対応できなくなる。

これは、気圧の変化に敏感なことと似ているのかもしれない。

その不安定な状態で「下を覗く」ことでいっそう精神も動揺しやすく、恐怖感や不安感も増すのだと思う。

2019.2.14

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