夜更け過ぎは何時頃(いつ)?

夜更け過ぎは何時頃(いつ)?

雨は夜更け過ぎに雪へと変わることはなく、朝、目が覚めて布団から顔を出すと、窓の外は眩しいくらいに青かった。

予報を確認すると、雪のマークは消え、嘘のように無数の太陽が並んでいた。

この冬は、どうやら雪とは縁がなさそうだな、などと考えていたら、ふと一つの疑問が浮かんだ。

雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう、というのは有名な山下達郎の『クリスマス・イブ』の歌い出しだが、そもそも夜更け過ぎとは、一体いつ頃のことを指すのだろう。

夜更け、というのは想像がつく。

何時頃、という明確な時間帯はないが、夜が更ける(深ける)、すなわち深夜のことを意味する。

明確な時間の定義がないという理由から、「夜更け」というのは天気予報の公式な言葉としては使用しないことになっているようだ(代わりに「夜遅く」を使用する)。

一方、和歌を見ると、「み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり」「やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて かたぶくくまでの 月を見しかな」など、夜が更ける、という表現が昔から存在していることがわかる。

電気もなく灯りの少なかった昔は、今よりもずっと夜は長く、まさに深まっていく、という感覚があったのだろう。

その意味では、夜更けや深夜と言われる姿も今とだいぶ違ったのだろうと思う。

個人的には、夜更けというのはまさに「夜が更けていく流れ」を指す動的な感覚のような気がする。

だから、明確な時間帯が決められないのではないか。たとえば、夜十二時から二時くらいまでのゆっくり静まり返っていく流れや感覚も総称し、「夜更け」と捉えているのではないか、と思う。

さて、話を元に戻す。山下達郎の『クリスマス・イブ』に出てくる「夜更け過ぎ」とは、果たして何時頃のことを指すのだろう。

夜更けの終わりが、たとえば深夜二時くらいとすると、「夜更け過ぎ」というのは三時くらいかもしれない。

もう少し朝に近づくと、「夜明け前」「未明」という表現のほうが適当になる。

ただ、夜明け前や未明だと、新しい一日の始まりのニュアンスが強くなるので、「夜更け過ぎ」という表現のほうが歌の悲しげな雰囲気にも合っていると思う。

夜更けと、夜明け前のあいだに位置する「夜更け過ぎ」。

歌詞から解釈するに、「夜の延長にありながら、明日の来ない世界」というのが、「夜更け過ぎ」という時間帯のような気がする。

仮に、雨は夜明け前に雪へと変わるだろう、という始まりなら、もう「明日」が見えるし、逆に、雨は夜更け(真夜中)に雪へと変わるだろう、と言うのも、単なる予報っぽい浅さに繋がる。

もちろん、曲と文字のリズムの兼ね合いもあるのだろうが、「夜更け過ぎ」というと、夜更けのさらに向こうの世界、というニュアンスが描かれ、夢の世界に入っていくような奥行きが与えられる。

夜更けでも、夜明け前でもなく、「夜更け過ぎ」とすることによって、時間の世界を越えた空間が立ち上がるように思う。

2019.2.1

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